愛玩動物看護師試験に独学で合格する勉強方法
先日、『愛玩動物看護師試験』の合格発表がありました。
私は独学で勉強していましたが、無事に合格することができました。
現在、愛玩動物看護師の免許登録手続き中です。(おそらく登録はされていると思いますが、登録者名簿が本部に届いていないため、まだ未確認の状態です)
近日中には愛玩動物看護師名簿に登録される予定です。これで晴れて「愛玩動物看護師」と名乗ることができます。
今回のコラムの内容ですが、合格報告をした際に周囲の方からよく聞かれた「独学で勉強したの?」「難しかった?」という質問についてお話ししたいと思います。
現任者ルートでの受験
そもそも愛玩動物看護師の資格って必要なの?
動物病院で勤務したことがなく、ペットシッターやペットホテルなどで頑張っている方の中には、「愛玩動物看護師を目指したいけれど自信がない」あるいは「そもそも自分に受験資格があることすら知らなかった」という方もいらっしゃると思います。
そんな方にこそ、ぜひ読んでいただきたくて今回のコラムを書いています。
「わざわざ勉強して、愛玩動物看護師の免許を取っても何かメリットがあるの?」と聞かれたことがあります。
その答えとして、まず最大のメリットは、獣医師の指示書があれば、ペットに投薬ができるようになることです。
たとえば、お客様から事前にお仕事を依頼され、ペットのお預かり方法などについてお話をしている際に、
「ごはんのときにこの薬も飲ませてください」と言われたら、どうしますか?
「私は投薬できないので……」とお断りしますか?
それとも、「大変お手数をおかけいたしますが、かかりつけの獣医師さんに投薬指示書を出してもらえませんか?」とお願いしたうえで、お仕事を引き受けますか?
今までご利用くださっていたお客様のペットが病気になり、どうしても投薬が必要。だけど資格がないために、そのご要望にお応えできないのは、少し寂しい気がしませんか?
そして、資格の有無ももちろん重要ですが、愛玩動物看護師試験を受けるために勉強をすること自体が、何よりも価値のあることだと思います。
私は、受験勉強をして本当に良かったと心から感じています。
なぜなら、今まで知らなかった知識がたくさん手に入ったからです。
「でも、知識なら自分で勉強すればいいのでは?」と思われるかもしれません。
たしかに、動物病院で勤務されている現役の看護師さんなら、日々の業務の中で自然と知識や技術が身につくでしょう。
しかし、日々の忙しい業務に追われる中で、体系的に新たな知識を身につけることは、そう簡単なことではありません。
受験という“強制力”によって、テキストを読み、問題集を解く。その中で得られる知識が確実にあります。
その知識は、自分自身を助けるだけでなく、大切なお客様のペットを守ることにもつながるのです。
資格を取ること自体を目的にするのではなく、知識を身につける手段として、ぜひ一度、受験勉強にチャレンジしてみてはいかがでしょうか?
現任者ルートって
さて、まず大前提として、今回お話しするのは、現任者ルートで合格するための勉強方法です。
特に、動物病院等で勤務したことがない『第一種動物取扱業を営む事業所において、動物取扱責任者として対象業務を行った者』または『動物看護に係る知識および技能を、一般職員とは区別されて動物看護に係る業務に従事した者』を対象としています。
まず、愛玩動物看護師になるために現任者は、
1. 指定講習会
2. 予備試験
3. 国家試験
というルートをたどっていきます。
指定講習会
現任者の指定講習会は30時間のコースです。
「指定講習」とは、愛玩動物看護師となるための補完的な位置づけで、理解しておくべき内容について学ぶものです。
講習の内容には、愛玩動物看護師の職責、業務の実践に必要な理論、実践的な業務の流れなどが含まれており、動画とテキストを使って学習します。
この講習に試験はありませんが、本試験で役立つ内容が詰まっていますので、手を抜かずしっかりと勉強されることをおすすめします。
すべての講義を受講し終えると、修了証明書が発行されます。
予備試験の申し込みには、この修了証明書が必要ですので、忘れずにダウンロード・印刷しておきましょう。
ちなみに、指定講習会の申込締切は7月21日まで、受講期間は7月27日までです。
今年受験する予定の方、または受験してみたいと考えている方は、なるべく早めにお申し込みください。
・30時間コース 26,000円 一般財団法人 動物看護師統一認定機構(※テキスト代込み)
・30時間コース 11,000円 愛玩動物看護師国家試験指定講習会(※テキストは別途用意する。ただし、購入は必須ではない)
予備試験
国家試験を受けるための前段階となる試験です。
国家試験に比べると、合格率の高さからも分かる通り、難易度はそこまで高くありません。
基本をしっかり押さえて、確実に合格点を取ることが大切です。
受験手数料 14,000円
国家試験
予備試験を受けた人も、受けていない人も、必ず受けなければならない試験です。
予備試験よりもレベルは上がりますが、確実に取るべき問題を落とさなければ大丈夫。
未知の問題が出ても焦らず、自分を信じて、最後まで問題を解ききりましょう。そして合格を手に入れてください。
受験手数料 27,200円
愛玩動物看護師試験の勉強方法
さて、本題です。
愛玩動物看護師試験の勉強方法についてご紹介します。
すでに多くの方が勉強法について書かれていますが、ここではあくまで「私のおすすめ勉強方法」としてお読みいただければ幸いです。
合格するために大切なのは、『自分自身に合った方法で勉強すること』です。
たくさんの教材を読み、何冊もの問題集を解けば、多くの知識を身につけることができるでしょう。
しかし、働きながら受験勉強をされている方の中には、勉強時間を確保するのが難しい方も多いかもしれません。
だからこそ『合格』するためには、絶対に覚えるべきことをしっかりと理解し、効率よく知識を増やしていくことが重要です。
国家試験の合格基準は、
必須問題の正答率70%以上、かつ一般問題と実地問題の総合正答率60%以上です。
この基準をクリアするためには、過去問題(第1回~第3回)で9割の正解を目指して勉強してみてください。
そして、試験に見事合格した後には、参考書を活用してさらに知識を深めていけばよいのです。
使用したのはこの2冊です。
愛玩動物看護師国家試験対策 楽しく学べる参考書
まず参考書ですが、私はこの『愛玩動物看護師国家試験対策 楽しく学べる参考書』1冊のみで勉強しました。
紹介されている勉強法の中には、参考書+教科書というものもありますが、私は教科書を全部読む余裕がありませんでした。
この参考書はとにかく情報量とページ数が多く、さっと読むだけでも非常に時間がかかりました。
勉強法としては、
1回目は、最初から最後までとにかく目を通す。専門学校などで学んだことがない方にとっては、すぐに理解したり覚えたりするのは難しいと思います。ですので、まずは読み終えることを目標にしてください。
そしてあまり理解できていなくても、次に紹介する問題集を一度解いてみてください。点数が悪くても気にしなくて大丈夫です。どのような問題が出題されるのかを知ることができればOKです。
併せて、動物看護師統一認定機構のHPに掲載されている
予備試験問題(必須)も解いてみましょう。
2回目は、しっかりと内容を確認しながら読み進めていきます。
そして、読んでも理解できない項目があれば、動画を活用します。すべての動画を視聴できれば理想ですが、時間がない方は分からない項目のときだけ見ることをおすすめします。
その後、問題集を解いてみましょう。自分が参考書の内容をどれだけ理解しているのかを把握することが大切です。
この時点では、まだ合格点を取れなくても大丈夫。
1回目と同様に、問題集と予備試験問題を解きましょう。自信がある方は、
国家試験問題にもチャレンジしてみてください。
だいたいここまでを、予備試験を受ける前までに終えておくことをおすすめします。
その後は、何度も問題集や試験問題を解いて、間違えた項目をひたすら読み返し、理解して覚えることを繰り返します。
動画の中で先生が「これの実物の写真はネットで検索すれば出てくるので、必ず確認すること」と、何度もおっしゃっています。
細胞であったり医療機器であったりしますが、自分で「よく分からない」と思った項目については、必ず検索して自分の目で確認する習慣をつけてください。
それが、合格に近づくための秘訣です。
「テストの点数が上がらないから」と言って他のテキストに手を出しても、劇的に点数が伸びるとは限りません。
ある程度の難易度がある国家試験であっても、目の前の参考書をしっかり理解し、重要なポイントを確実に覚えた人が合格しています。
愛玩動物看護師国家試験完全対策問題集(2025年版) [ 国試研 ]
私が使用した問題集は『愛玩動物看護師国家試験完全対策問題集(2025年版)』のみです。
先ほども書きましたが、問題集を解くときは、1回目は点数を気にせず、とにかく解いてみてください。
出題されている問題の傾向がつかめれば、それだけで十分です。
2回目は、「参考書の内容を自分がどれだけ理解できているか」を確認する気持ちで解いてみましょう。
まだ合格点が取れなくても大丈夫。自分の得意・不得意が少しずつ見えてきます。
そして、問題集や国家試験の過去問を何度か解いていると、どのような意図で問題が作成され、出題されているのかが、何となくわかってくるようになります。
何度も問題集を解いていると、
問題と答えを覚えてしまいます。
その結果、問題集では点数が上がるのに、別の問題集や模試を受けてみると、思ったほど点数が取れない……という人がいます。
なぜでしょう?それは、本質を理解しているのではなく、ただ「答えを暗記している」に過ぎないからです。
問題集を解く際に意識してほしいのは、『問われている内容を理解する』こと。
正解の選択肢を覚えても、それだけでは意味がありません。
「なぜその答えになるのか?」という理由を、自分の言葉で説明できるようになることが大切です。
自分自身でまとめノートを作る
まとめノートを作ることには賛否ありますが、愛玩動物看護師試験に関しては、作成をおススメします。
なぜなら、第1回〜第3回の国家試験では、同じような内容の問題が繰り返し出題されているからです。
つまり、絶対に覚えなければならない内容は限られているということです。
たとえば、炎症、DNA・RNA、細胞内小器官、骨、小型犬・大型犬に多い病気、心臓、画像検査、血液、細胞、呼吸器、歯、ホルモン、内分泌、皮膚、神経、脳、感覚器、ウイルス・細菌、寄生虫、器具、薬、法律など。
予備試験や国家試験の過去問を解く際に、「どの分野から出題されたか」をチェックし、付箋などで分かりやすく分類した上で、自分が理解できていない分野を中心にまとめノートを作ってみてください。
模試を受けてみる
国家試験の直前期には、
動物看護ポータルさんが実施している「愛玩動物看護師国家試験対策 全国統一模試【国家試験直前】」を一度受けてみることをおススメします。
今の自分の全国順位を知ることができ、これまで使用してきた問題集や過去問とは異なる「初見の問題」を通して、どれだけ実力がついたかを確認できます。
直前期の対策にも非常に役立ちます。
動物病院で医療機器を見てみる
動物病院で勤務していない方にとって、病院で使用されている医療機器に関する問題は難しいですよね。
普段触れることがないので、「この機器は何?」「この機器のこの部分は何?」と問われても、「え~なんだろう?」と思ってしまうかもしれません。
正直、私はこの手の問題が苦手でした。なので、愛犬が動物病院で診察を受けているとき、エコー検査などの際には、医療機器を(もちろん迷惑にならない位置から)真剣に観察していました。
エコー画像の内容と機器の外観をできるだけ覚えられるように、意識して診察を見守っていました。
皆さんもペットの診察時に医療機器を見る機会があれば、ぜひしっかり観察してみてください。
また、薬を処方されるときも、病院が混雑しておらず、獣医師さんに余裕がありそうなタイミングであれば、その薬について少し詳しく説明してもらうとよいでしょう。
『どのような効能があり、どのような副作用があるのか』
それは受験勉強としてだけでなく、飼い主としても知っておくべきことだと思います。
薬は種類が多く、なかなか覚えにくいかもしれません。
でも、ご自身のペットに処方された薬についてであれば、理解したり覚えたりするモチベーションも高まるのではないでしょうか。
YouTubeやSNS、漫画を利用する
お昼休憩中や電車での移動中など、スキマ時間にYouTubeやSNSを使って勉強するのも、時間を有効に使う方法としておすすめです。
YouTubeの
愛玩動物看護師国家試験のツボさんのチャンネルでは、過去問やオリジナル問題が多数紹介されており、知識の再確認に役立ちます。
また、X(旧Twitter)などのSNSでも定期的に問題を投稿してくださっている方がいらっしゃるので、フォローして問題を解いていくことで自然と知識が増えていきます。
また多くの方が読まれていますが、細胞に関しては『働く細胞や働く細胞 猫』はとても分かりやすく、細胞や免疫、病原体について解説してくれています。試験には好中球や血小板などが出題されますので、絶対に覚えてください。
愛玩動物看護師試験を受けた正直な感想
仕事をしながら勉強するのは本当に大変です。
私も仕事や、他の学びと並行して愛玩動物看護師試験の勉強をしていました。
4月頃から勉強を始め、平日はできるだけ1時間ほどの勉強時間を確保するようにしていました。
トータルの勉強時間ですが、月に20時間×10ヵ月=200時間程度です。
専門学校などで学ばれている方々に比べると、トータルの勉強時間は少なかったと思います。
参考書についてはほぼ全般的に学習しましたが、『法律』に関しては、すでに行政書士として業務を行っており、お客様から報酬をいただけるだけの知識と実務経験があるため、自信を持って臨むことができました。
そのため、もし法律の知識に自信がない場合は、200時間の学習時間に加えて、法律分野を理解するための時間をさらに確保することをおすすめします。
現任者ルート(『第一種動物取扱業を営む事業所において動物取扱責任者として対象業務を行った者』または『動物看護に係る知識及び技能を一般職員とは区別されて動物看護に従事した者』)の方の中には、同じように「なかなか勉強時間を取れない」と感じている方も多いかもしれません。
仕事や家事、育児などに追われて、私よりもトータルの勉強時間が少なかった方も、合格されています。
勉強時間が取れない方は、効率よく勉強する方法を見つけてくださいね。
試験を受けた正直な感想としては、勉強した内容を【10】とすると、実際に試験で出題されたのは【1】くらいの感覚でした。
実地問題では初見の問題もあり、正直わからない部分もありましたが、それ以外の必須問題や一般問題は、比較的解きやすかったと感じました。
最初にも書きましたが、私はこの試験を受けて心から良かったと思っています。
目的だった「獣医師の指示書があれば投薬できるようになる」ということを達成できたのはもちろんですが、試験勉強を通して、今までにない知識を身につけることができました。
ただし、それはあくまで“知識”であり、現場で役立つ“技術”はまったく身についていません。
現在、動物病院で働いていらっしゃる愛玩動物看護師さんは、知識だけでなく技術も兼ね備えています。
ただ免許を持っているだけの外部の人間とは、天と地ほどの差があると感じています。
もし「愛玩動物看護師の資格を持った〇〇」と名乗りたいだけで、せっかく学んだことを活かそうとしないのであれば、ペットや飼い主さんからは支持されません。
“愛玩動物看護師”という名前に恥じないように、これまで以上にペットと飼い主さんに寄り添える人になれるよう、日々努力を重ねることが何より大切だと思います。
これから試験を受けられる方は、「自分は何のために愛玩動物看護師試験を受けるのか」をしっかりと考えた上で、学びを続けてください。